これまでの「クレメンツ・リベイロ(Clements Ribeiro)」より大人びたテイストのコレクションとなりました。全体的に黒がベース。フラワーモチーフの服が目立ちました。黒やこげ茶地に総花柄のワンピースが何度も登場しました。
髪はセンターで分けた前髪をきちんとアップしてまとめ、トップにボリュームを持たせました。目の周りを真っ黒にした、退廃的な雰囲気漂うメークはこれまでのイメージとはひと味違います。20世紀メキシコの伝説的女性画家、フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)を思わせるスタイルです。デザイナーデュオの一人、イナシオ・リベイロ(Inacio Ribeiro)は同じ南米のブラジル出身です。
カーロは18歳でバス事故に遭い、脊椎(せきつい)を損傷。生涯に30回以上の手術を受けながら、シュールレアリスム・タッチの自画像を描き続けました。ほとんどのモデルがしていた、眉毛が左右つながったようなメーク(mono-browまたはuni-browと呼ばれています)もカーロへのオマージュのようです。何度か現れたツイードは2度結婚した夫の画家、ディエゴ・リベラ(Diego Rivera)のイメージでしょうか。
色使いは「赤と黒」のコントラストを、強く押し出しています。小ぶりのフラワーモチーフを全身にちりばめたワンピースやドレスは、「クレメンツ・リベイロ」らしいマルチカラー。黒地に赤や白の大輪の花を配したデザインも多く見られました。黒のファードレスの胸元に真っ赤な花一輪という取り合わせはインパクト大。こげ茶とゴールドの取り合わせも目に付きました。
膝を見せる膝丈アイテムをプッシュしていました。膝小僧がぎりぎりのぞくような、ニッカボッカ風の膝丈パンツが何度も登場。ワンピースも膝丈が多く見られました。黒の膝丈スカートの裾だけに赤をあしらうデザインはなまめかしい色気を感じさせます。露出したすねの健康美と、妖艶な「赤と黒」の危ういバランスが心憎い計算です。
胸元が大きく開いているのに、全体は名家の令嬢風というアンバランスな組み合わせも意外感がありました。バストのふくらみが顔をのぞかせるほど、切れ込みは深い。スクールガール風の茶のショートソックスも利いています。
小物ではバッグが目立ちました。キーホルダー付きスモールバッグは、ストラップで手首に巻き付けて提げるスタイルが目新しい。小ぶりのクラッチバッグや、横長の手持ちタイプも登場しました。バッグにアクセサリーを付けるという最近の流行を採り入れ、 バッグにはおもちゃのようなファニーなキーホルダーを付けていました。靴は相変わらずキュートで、大きな蝶々のモチーフ付きでした。
ワンピースには袖が付いているものが多く、上着なしでも、1枚でそのまま着られそうです。丈の長さが膝丈で、しかも黒ベースですから、結婚式やパーティに抵抗なく使えるでしょう。
「クレメンツ・リベイロ」はブラジル人男性デザイナーのリベイロ氏と、英国人女性デザイナーのスザンヌ・クレメンツ((Suzanne Clements)氏の夫妻が手掛けるブランド。2人は同ブランドのほかに、2001年春夏から「Cacharel(キャシャレル)」の主任デザイナーを務めています。
2人はファッション校の名門、セントラル・セント・マーティンズ校で出会い、1992年に結婚しました。その翌年の93年、「クレメンツ・リベイロ」ブランドを立ち上げています。現在もロンドンを拠点にしています。
英国伝統のトラディショナルエレガンスをカッティングやモチーフで崩して楽しんでいるようです。どこか懐かしい英国の雰囲気と、ロック音楽をイメージソースとする若々しいスピリットの混在が持ち味。 技巧派としても知られ、左右のアシンメトリーや小粋なアップリケなど、ディテールに凝った仕掛けを得意としています。
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